二話:「2009年春 ぼく.1」
「・・・うっ・・・ううぅ・・・苦しい・・・やめろ、やめろ、やめろ・・・」
「やめろーーーーーー」
「伸二!?大丈夫??」
-夢か。もう何度目だろう、繰り返しこの夢を見るのは-
胸が激しく脈を打っているのを感じる、僕は大きくため息をつく。
心配そうに、僕の顔を覗き込む女。
「あぁ、うん。」
女を腕に引き寄せながら、小さく頷く。
女の部屋をあとにしたぼくは、愛車「ビートル」と共にいつものところへ足を運ぶ。
朝の優しい陽射しがぼくたちを包み込んでくれる。
朝のラッシュ時にも関わらず、人々は穏やかなオーラを発しながら目的地へと歩んでいる。
ぼくもその一人なんだろうか。
いつもより早く着いた。ここは
ぼくにとっての生きがいでもあり、癒しを提供してくれるお気に入りの場所。
心のソコから成長を願い、その願いが伝わると何かを与えてくれる。
時には「怒り」時には「やさしさ」
様々な表情と感情をぼくに与えてくれる。そして包んでくれる。
共に成長していることが感じあえるし共感できるのだろう。
言葉を交わすことは出来ないにせよ、生命エネルギー同士が触合うことが実感できる。
「この世に存在する毒に触れることなく育ってくれよ」
「この世に存在する毒から、ぼくが守ってあげるから」
それは、これからの人類の課題でもあり、必要とされるものだろう。
ー・・・うっ・・・ううぅ・・・苦しい・・・やめろ、やめろ、やめろ・・・ー
今朝、夢で聞いた声が何度も何度も鼓膜の中を駆け回っている。
気になってしょうがないよ。
そういうぼくを励ましてくれるかのように、青々と育った植物達をあとに次へと車を走らせた。
さよなら
第一作目:第一話「序章」→
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